教員採用試験の論文対策を始めたとき、
「何を書けばいいのか全く分からない」
という人は少なくありません。
問題文を読んでも、最初の一文が出てこない。
書き始めても途中で内容がなくなる。
具体策を書いたつもりなのに、抽象的になってしまう。
私も社会人から教員を目指し、独学で教員採用試験対策を進めました。
時期を隔てて東京都教員採用試験を2度受験し、いずれも最終合格しています。
現在は実際に学校現場で教員として働いています。
その経験から言えるのは、教採の論文は文章が上手な人だけが書ける試験ではないということです。
論文を書くときに最初から文章を書き始めません。
問題を分解する → 自分の考えを決める → 具体策を2つ程度考える → 構成メモを作る → 文章にする
この順番で進めるだけでも、途中で何を書けばいいか分からなくなることはかなり減ります。
教員採用試験の小論文・論作文とは?
教員採用試験では、自治体によって「論文」「小論文」「論作文」など呼び方が異なります。
また、
- 実施する選考段階
- 試験時間
- 字数
- 出題形式
- 評価方法
も自治体によって異なります。
そのため、最初に市販の参考書を読むより、自分が受験する自治体の最新の実施要綱と過去問を見ることが重要です。
この記事では、自治体を問わず応用しやすい基本的な考え方を解説します。
最初にやることは「文章を書くこと」ではない
論文が苦手な人ほど、問題文を読んだ直後に原稿用紙へ書き始めてしまいます。
しかし、これをすると途中で、
「次に何を書けばいいんだろう」
となりやすくなります。
論文を書く前に、まず設計図を作ります。
家を建てるときに、いきなり木材を組み始めないのと同じです。
教採論文でも、文章力より先に構成を考えます。
論文対策は5ステップで進める
ステップ1
問題文で何を聞かれているのか分解する
ステップ2
自分の考えを一文で決める
ステップ3
教師としての具体策を考える
ステップ4
構成メモを作る
ステップ5
文章にして、最後に設問とのズレを確認する
順番に見ていきます。
ステップ1|問題文を分解する
論文で最も怖いのは、文章が下手なことではありません。
聞かれていることに答えていないことです。
例えば、次のような架空の問題が出たとします。
児童生徒が安心して自分の考えを表現できる学級をつくることが大切です。
このことについて、あなたの考えを理由とともに述べなさい。
また、その考えを踏まえ、教師としてどのように取り組むか、具体的に述べなさい。
この問題なら、少なくとも次のことを聞かれています。
- 安心して考えを表現できる学級についてどう考えるか
- なぜそう考えるのか
- 教師として何をするのか
つまり、
「安心できる学級は大切です」
と教育論を語るだけでは足りません。
考え+理由+教師としての具体的な取り組み
まで書く必要があります。
問題文には線を引く
本番では、問題文の中の重要語を拾います。
例えば、
- あなたの考え
- 理由
- 教師として
- 具体的に
- 二つ挙げ
- 校種・教科に即して
などです。
こうした条件を読み飛ばすと、内容が良くても問題の要求から外れる可能性があります。
論文は、知っている教育用語を書く試験ではありません。
設問に答える試験です。
ステップ2|自分の考えを一文で決める
問題を分解したら、次に自分の考えを一文で書きます。
例えば先ほどの問題なら、
児童が安心して自分の考えを表現するためには、互いの考えを認め合える学級づくりが必要である。
というように決めます。
最初の段階では、美しい文章でなくて構いません。
この一文が論文全体の軸になります。
途中で何を書くか迷ったら、
「この内容は、自分が最初に決めた考えにつながっているか」
と確認します。
ステップ3|具体策を考える
教採論文で特に差が出やすいのがここです。
例えば、
「子供一人一人に寄り添う」
「主体性を育てる」
「安心できる学級をつくる」
という言葉は大切です。
しかし、これだけでは具体策ではありません。
採用されたあと、実際に教室で何をするのかまで考えます。
抽象的な具体策を変えるとこうなる
私は、一人一人の意見を大切にする授業を行う。
これだけでは、何をするのかが見えません。
発問の後、すぐに挙手を求めるだけでなく、まず自分の考えをノートへ書く時間を設ける。その後、ペアや小集団で考えを伝え合う場を設定し、全体で発言することに不安がある児童も自分の考えを表現できるようにする。
これなら、教室での教師の行動が見えます。
具体策を作る5つの質問
「具体的に書いてください」と言われても、最初は難しいと思います。
そんなときは、次の5つを考えてください。
1.いつ行うのか
2.どこで行うのか
3.教師は何をするのか
4.子供にどんな活動をさせるのか
5.その結果、子供にどんな姿を目指すのか
この質問へ答えると、抽象論から具体策へ変わりやすくなります。
具体策は「授業」と「学級生活」から考えると作りやすい
テーマによりますが、具体策が思い浮かばない場合は、
授業の中でできること
と、
日常の学級生活でできること
に分けて考える方法があります。
例えば「自分の考えを表現できる子供を育てる」なら、
授業
ノートへ自分の考えを書く時間を確保する。
ペアや小集団で考えを伝える。
異なる考えを比較する。
学級生活
友達の発言を最後まで聞くことを学級全体で確認する。
間違いや異なる意見を否定しない雰囲気をつくる。
帰りの会などで友達の良さを伝え合う。
というように考えられます。
ただし、どんなテーマでも機械的に同じ二本柱にする必要はありません。
問題に最も合う具体策を選びます。
ステップ4|文章を書く前に構成メモを作る
ここまで考えて、初めて文章を書く準備ができます。
先ほどの例題なら、構成メモは次の程度で十分です。
自分の考え
安心して考えを表現するには、互いの考えを認める学級が必要
理由
間違いを恐れると、子供は発言・挑戦しなくなる
具体策1
授業で考える→ペア→全体の段階をつくる
具体策2
日常的に友達の意見・良さを認める学級活動
まとめ
一人一人が安心して考えを表現できる学級をつくる
この段階では箇条書きで構いません。
文章を書きながら内容を考えるのではなく、内容を決めてから文章にするのがポイントです。
序論・本論・結論はどう考える?
教採論文では、序論・本論・結論という構成がよく使われます。
ただし、「必ずこの型でなければならない」と考える必要はありません。
自治体の問題形式によって、求められる書き方は変わります。
基本的には、
序論
問題に対する自分の考えと理由を示す。
本論
教師としての具体的な取り組みを書く。
結論
自分の考えや教師としての姿勢を簡潔にまとめる。
と考えると整理しやすくなります。
序論で長い社会背景を書きすぎない
論文を書くと、
「現代社会は急速に変化しており……」
「グローバル化や情報化が進む中……」
という大きな話から始めたくなることがあります。
しかし、限られた字数の中では、問題に直接答える方が重要です。
社会背景を書くとしても、設問に必要な範囲にします。
本論では「取り組みます」で終わらない
例えば、
「子供同士が認め合える活動に取り組む。」
だけでは足りません。
さらに、
何をするのか。
教師はどう関わるのか。
なぜその取り組みをするのか。
どんな子供の姿を目指すのか。
まで書きます。
具体策は「やること+理由+目指す姿」で書く
やること
何を実践するか。
理由
なぜその実践が必要なのか。
目指す姿
その結果、子供をどのような姿へ育てたいのか。
この3つがそろうと、具体策が単なる活動紹介になりにくくなります。
教採論文の例文
先ほどの架空テーマを使い、短めの例を示します。
私は、児童が安心して自分の考えを表現するためには、互いの考えや違いを認め合える学級をつくることが重要だと考える。自分の発言を否定されたり、間違いを笑われたりする不安があれば、児童は自分の考えを表現することに消極的になるからである。
第一に、授業では一人で考える時間を十分に確保した上で、ペアや小集団で伝え合う活動を取り入れる。すぐに全体発表を求めるのではなく、段階的に自分の考えを言葉にする場を設けることで、発言に不安をもつ児童も参加しやすくする。また、異なる考えが出た際には、教師がその違いを価値付け、複数の考えから学べることを児童へ伝える。
第二に、日常の学級生活でも、互いの良さを認める関係づくりを進める。帰りの会などで友達の良かった行動を伝える場を設けるとともに、教師自身も児童の小さな努力や変化を具体的に認める。こうした積み重ねによって、自分も仲間も大切にされていると感じられる学級を目指す。
私は、児童一人一人の考えを丁寧に受け止め、互いの違いから学び合える環境をつくることで、安心して自分を表現できる児童を育てていきたい。
重要なのは、この文章を暗記することではありません。
問題への答え → 理由 → 具体策 → 子供の姿
という組み立て方を見てください。
模範解答は暗記しない
論文対策で模範解答を読むことには意味があります。
良い答案の構成、具体策、表現を学べるからです。
しかし、一つの答案を丸暗記して、どんな問題にも当てはめようとすると危険です。
少しテーマが変わっただけで、設問に合わなくなるからです。
覚えるなら文章ではなく、
- 設問の分解方法
- 構成の作り方
- 具体策の考え方
- 教育課題に関する知識
をストックします。
論文が書けない人に多い7つの失敗
1.いきなり書き始める
最も多い失敗です。
途中で話題がなくなったり、同じ内容を繰り返したりします。
必ず構成メモを先に作ります。
2.問題文の一部にしか答えていない
「あなたの考えと理由」を求められているのに、具体策だけを書く。
反対に、「教師としての具体的な取り組み」を求められているのに教育論だけを書く。
設問を分解して確認します。
3.抽象語ばかり使う
例えば、
「子供に寄り添う」
「主体性を大切にする」
「一人一人を尊重する」
だけでは教師の行動が見えません。
「具体的に何をするか」まで書きます。
4.教育用語を入れることが目的になっている
教育用語を正しく使うことは大切です。
しかし、
主体的・対話的で深い学び。
個別最適な学び。
協働的な学び。
ウェルビーイング。
といった言葉を並べれば良い論文になるわけではありません。
その言葉を自分の実践へどうつなげるかが重要です。
5.具体策をたくさん書きすぎる
限られた字数で、5個も6個も取り組みを書くと、一つ一つが薄くなります。
数を増やすより、問題に合う具体策を絞って詳しく説明します。
6.自分一人ですべて解決しようとする
いじめ、不登校、特別な支援、保護者対応などのテーマでは特に注意します。
教師一人で何でも解決する答案ではなく、必要に応じて、
- 管理職
- 学年
- 養護教諭
- 特別支援教育コーディネーター
- スクールカウンセラー
- 保護者
- 関係機関
などと連携する視点を持ちます。
7.最後まで書いて満足する
書き終わったら、誤字だけではなく、
そもそも設問に答えているか
をもう一度確認します。
書き終えたらこの順番で見直す
1.設問に全部答えているか
2.自分の考えと具体策がつながっているか
3.具体策が教師の実際の行動になっているか
4.同じ内容を繰り返していないか
5.主語と述語がおかしくないか
6.誤字脱字がないか
7.字数・形式などの条件を満たしているか
教採論文はいつから対策する?
筆記対策が完璧になるまで待つ必要はありません。
論文は、知識を覚えるだけでは上達しにくいからです。
実際に、
考える。
構成を作る。
書く。
添削される。
書き直す。
という練習が必要になります。
そのため、受験する自治体で論文が課されることが分かったら、早い段階から少しずつ始めて構いません。
最初から毎回全文を書かなくていい
論文練習というと、毎回原稿用紙いっぱいに書かなければならないと思うかもしれません。
しかし、初心者ほど最初は構成練習が有効です。
例えば過去問を一つ見て、10分程度で、
- 何を聞かれているか
- 自分の考え
- 理由
- 具体策1
- 具体策2
- まとめ
だけを書き出します。
これなら、短時間でも複数テーマを練習できます。
おすすめの論文練習4段階
段階1 過去問を読む
まず、自分が受験する自治体でどのようなテーマが出ているか確認します。
段階2 構成だけ作る
答案全文を書かず、設問の分解と具体策を考えます。
段階3 時間を気にせず1本書く
構成を文章にする練習をします。
最初から本番時間内に完成できなくても構いません。
段階4 本番時間で書く
書き方に慣れてきたら、受験自治体の時間・字数条件に合わせて練習します。
過去問は必ず使う
教採論文は、自治体によって出題形式に違いがあります。
そのため、一般的な論文参考書だけで対策を終わらせません。
受験自治体の過去問を使います。
過去問を見れば、
- どんな教育課題が扱われるか
- 何を答える形式なのか
- 具体策を何個求められるか
- 校種や教科に即した回答が必要か
などが分かります。
準備しておきたい教育テーマ
出題テーマを完全に予想することはできません。
ただし、教育現場で重要になっているテーマについて、自分なりの考えと具体策を持っておくことはできます。
例えば、
- 学力向上
- 主体的に学ぶ力
- いじめ
- 不登校
- 特別支援教育
- 多様性
- 自己肯定感・自己有用感
- ICT活用
- 情報モラル
- 生成AI
- 学校と家庭の連携
- 集団づくり
- 個に応じた指導
などです。
ただし、この一覧を全部暗記する必要はありません。
自分の自治体の過去問と最新の教育方針を優先してください。
テーマごとに答案を丸暗記しない
例えば、
いじめ用答案。
不登校用答案。
ICT用答案。
自己肯定感用答案。
を一字一句覚える方法はおすすめしません。
代わりに、テーマごとに、
- 何が問題なのか
- 教師として何を大切にするか
- 授業でできること
- 学級経営でできること
- 組織として連携できること
という材料をストックします。
本番では、問題文に合わせてその材料を組み合わせます。
教師経験がない人は具体策をどう考える?
大学生や社会人経験者の場合、
「学校現場を知らないから具体策が思いつかない」
と不安になることがあります。
現職経験がないのは当然です。
教育実習、学校ボランティア、塾、学童、大学で学んだことなども材料になります。
また、学習指導要領や文部科学省・教育委員会の資料を読み、現在の学校教育で何が重視されているかを学びます。
ただし、知らない学校現場を知っているように書く必要はありません。
社会人経験は論文にも使える
社会人経験がある人なら、
- 人の話を聞く
- チームで仕事をする
- 課題を改善する
- 相手に合わせて説明する
- 計画的に進める
といった経験を教育へつなげられる場合があります。
ただし、会社での成功体験をそのまま学校へ持ち込むのではありません。
学校と企業は違います。
その経験から得た力を、子供や学校組織の中でどう生かすかを考えます。
添削は受けた方がいい?
可能なら、一度は第三者に読んでもらうことをおすすめします。
自分では、
「具体的に書けている」
と思っていても、他の人には意味が伝わらないことがあります。
また、自分の文章を何度も読んでいると、内容の飛躍や説明不足に気付きにくくなります。
大学の教職センター、教員、教採対策講座など、利用できる環境があれば活用してください。
生成AIで論文対策をするなら
生成AIを論文練習に使うこともできます。
ただし、
「合格する論文を書いて」
と生成させ、その文章を暗記する方法はおすすめしません。
それでは、自分で問題を分解し、具体策を考える力が育ちにくいからです。
使うなら、例えば自分で答案を書いた後に、
- 設問に答えていない箇所はあるか
- 抽象的な部分はどこか
- 同じ内容を繰り返していないか
- 具体策と理由につながりがあるか
を確認させます。
そして、最終的には自分で書き直します。
東京都を受験する人へ
東京都を受験する場合は、一般的な論文対策だけでなく、その年度の実施要綱と最新の過去問を必ず確認してください。
試験制度や出題形式は変更されることがあります。
私は東京都教員採用試験を時期を隔てて2度受験し、いずれも最終合格しました。
ただし、私が受験した当時の制度を現在の制度としてそのまま説明することはしません。
最新の形式は東京都教育委員会の公式情報を優先してください。
論文対策をもっと実践的に練習したい人へ
論文は「書き方を理解する」だけではなかなか上達しません。
実際に問題を分解し、構成を作り、答案を書いてみる必要があります。
私が教採対策で使ってきた考え方をもとに、論文の実践教材もまとめています。
設問の分解、構成メモ、字数配分、具体策の考え方、答案例、本番前の練習方法まで一つにまとめています。
よくある質問
文章を書くのが苦手でも教採論文は大丈夫ですか?
文章を書くことが得意でなくても、まず構成を決め、短く分かりやすい文で書く練習をすれば改善できます。
難しい表現を使うことより、設問へ正確に答えることを優先してください。
序論・本論・結論で必ず書かなければいけませんか?
必ずしも全国共通のルールではありません。
受験自治体の問題形式を確認してください。
ただし、自分の考え、具体策、まとめという流れは文章を整理するうえで使いやすい構成です。
論文は何本くらい書けばいいですか?
「○本書けば合格」という基準はありません。
本数だけを増やすより、一度書いた答案を見直し、何が悪かったのかを確認して書き直す方が重要です。
模範解答は覚えた方がいいですか?
文章そのものを暗記する必要はありません。
構成や具体策の考え方を学び、自分の言葉で書けるようにしてください。
教育用語をたくさん入れた方が評価されますか?
教育用語を入れること自体を目的にしない方がよいでしょう。
問題に合った内容を、具体的な教師の行動として説明することが先です。
過去問はいつから使えばいいですか?
最初から使って構いません。
過去問は実力確認だけでなく、どのような形式・テーマで出題されるのかを知るためにも使います。
本番前チェックリスト
□ 問題文の条件をすべて確認した
□ 問われていることを分解した
□ 自分の考えを一文で説明できる
□ 理由がある
□ 具体策が教師の実際の行動になっている
□ 具体策を詰め込みすぎていない
□ 子供にどんな姿を目指すか書けている
□ 必要に応じて組織との連携がある
□ 問題と関係のない教育用語を並べていない
□ 同じ内容を繰り返していない
□ 指定字数・形式を確認した
□ 最後にもう一度「設問に答えているか」を確認した
まとめ|論文は「書く前」にほぼ決まる
教員採用試験の論文で、いきなり上手な文章を書く必要はありません。
まず、
問題は何を聞いているのか。
自分はどう考えるのか。
なぜそう考えるのか。
教師として具体的に何をするのか。
を整理します。
そして、文章を書く前に構成メモを作ります。
論文が途中で書けなくなる人の多くは、文章力がないのではなく、書く前の設計が十分ではありません。
まず過去問を一問選び、全文を書かなくても構いません。
「自分の考え・理由・具体策1・具体策2」
の四つだけ書き出してみてください。
そこから論文対策を始めれば大丈夫です。

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